石塚運昇(いしづか・うんしょう)さんは、『ポケットモンスター』のオーキド博士、『ONE PIECE』の黄猿、『カウボーイビバップ』のジェット・ブラックなど、世代を超えて記憶されるキャラクターを演じた声優です。低く響く声と独特の間合い、落ち着きの中に潜むユーモアや威圧感を自在に使い分け、アニメ、洋画の吹き替え、ナレーション、舞台演出まで幅広く活動しました。
2018年8月13日に食道がんのため亡くなった石塚さんですが、その声は過去の出演作品だけにとどまりません。生前に収録された音声が後年の『ポケットモンスター』でも使用され、2022年には特別編でナレーションが流れました。オーキド博士役を引き受けた際の意外な経緯や、エンディングテーマ「ひゃくごじゅういち」との関係、後任の声優まで、2026年時点で押さえておきたい事実を整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 代表作:オーキド博士、黄猿、ジェット・ブラックをはじめ、ミスター・サタンやジョセフ・ジョースターなど多彩な役を担当。
- 意外な裏話:オーキド博士役は本人にとっても戸惑いのあるスタートだったが、歌唱曲「ひゃくごじゅういち」とイベント出演を通じて子どもたちとのつながりを実感した。
- 死去後の継承:2018年8月13日の死去後、オーキド博士や黄猿などは後任へ引き継がれた一方、生前の収録音声も作品に残されている。
【プロフィールと経歴】福井県勝山市出身、舞台から声優界へ
石塚運昇さんは1951年5月16日生まれ、福井県勝山市出身の声優・俳優・ナレーター・演出家です。最終所属事務所は青二プロダクション。2018年8月13日、食道がんのため亡くなりました。満年齢では67歳でした。
青二プロダクションの公式プロフィールには、芸歴として劇団シェイクスピアシアターが記載されています。石塚さんの表現を理解するうえで注目したいのは、声優としての活動だけでなく、舞台俳優として培った経験を持っていた点です。
アニメの声優というと、キャラクターの声色を作る技術に注目が集まりがちです。しかし、石塚さんの演技には、言葉を発するまでの間、相手を見定めるような沈黙、短い一言に込められた感情の変化がありました。こうした表現は、単に低い声を出すだけでは生まれません。人物の心理や場面全体の空気を捉える俳優としての技量が、声の演技にも反映されていたと考えられます。
1984年にはテレビアニメ『巨神ゴーグ』で出演歴を重ね、その後、『カウボーイビバップ』『ポケットモンスター』『ONE PIECE』など、長期にわたり親しまれる作品に参加しました。マイナビニュースの訃報記事でも、石塚さんがアニメ、吹き替え、歌唱など幅広い分野で活躍したことが紹介されています。
また、石塚さんは朗読指導を中心とする「石塚運昇 リーディングカンパニー」を主催していました。参加者によるリーディング劇にも取り組み、演出や演技指導を手がけています。演じる本人として第一線で活動するだけでなく、言葉をどう届けるかという技術を、次の世代へ伝える立場にもあったのです。
なお、出身地を検索する際には「福井県」と「福井県勝山市」の表記が見られます。青二プロダクションの公式プロフィールでは福井県と記載され、人物情報では勝山市出身として紹介されています。
【オーキド博士の裏話】「ひゃくごじゅういち」と子どもたちが結んだ縁
石塚運昇さんを語るうえで、もっとも広く知られている役の一つが『ポケットモンスター』のオーキド博士です。ポケモンの世界を案内する研究者であり、物語の入り口を担う人物でもあります。落ち着いた声と親しみやすい語り口は、作品を見始めた子どもたちにとって、ポケモンの世界を身近に感じさせる要素でした。
ところが、オーキド博士役の始まりは、最初から本人が役柄を十分に理解して臨んだものではなかったといいます。石塚さんが後年に振り返ったエピソードとして知られるのが、キャラクターの詳細もよく分からない段階でテストを求められ、戸惑いを覚えたという話です。
さらに、録音前にはエンディングテーマを歌ってほしいと依頼されます。こうして生まれたのが、オーキド博士役の石塚さんとポケモンキッズが歌う「ひゃくごじゅういち」でした。ソニー・ミュージックの公式ディスコグラフィでも、歌唱名義は「オーキド博士(石塚運昇)とポケモンキッズ」と記録されています。
この曲は、初代『ポケットモンスター』のエンディングテーマとして親しまれました。ポケモンを集める喜びや仲間との出会いを歌う楽曲であり、オーキド博士のキャラクター性ともよく結びついています。石塚さんは、声の出演だけでなく、歌を通じても作品の記憶を支えたのです。
石塚さんが語った思い出の中でも印象的なのは、幕張メッセで開かれたCD先行発売のショーに参加し、初めて大勢の子どもたちの前で歌った経験です。子どもたちが目を輝かせながら一緒に歌い、「ハカセ」と声援を送る姿に触れ、画面の向こう側にいる視聴者を実感するようになったといいます。
本人にとって、その経験は単に人気キャラクターを演じたという話ではありませんでした。テレビの前にいる子どもたちを具体的に想像しながら話すことが、ほかの仕事にも生きるようになったと振り返っています。声の表現がようやく入り口に達してきたと感じた、という趣旨の言葉も残されています。
このエピソードから見えてくるのは、オーキド博士が石塚さんの代表作であると同時に、声優としての表現を深める転機にもなったことです。最初は戸惑いのあった役が、視聴者との直接的な交流を通じて、仕事に対する意識を広げるきっかけになりました。
なお、「ひゃくごじゅういち」は過去の楽曲として終わったわけではありません。ソニー・ミュージックは2023年12月27日、初代オープニングテーマ「めざせポケモンマスター」とともに、同曲を収録した7インチアナログ盤を数量限定で発売しています。長年の作品の記憶を、音楽という形で改めて手に取れるようにした展開でした。
【代表作一覧】黄猿からジェット・ブラックまで、声の幅を比較
石塚運昇さんの魅力は、オーキド博士のような親しみやすい人物だけにとどまりません。作品を横断して見ると、豪快な人物、寡黙な大人、威圧感のある権力者、軽妙な語り手まで、幅広い役柄を演じ分けていたことが分かります。
青二プロダクションの公式プロフィールに掲載された出演歴や、各作品のキャスト情報をもとに、主な代表作を整理します。
- 『ポケットモンスター』:オーキド博士。シリーズの案内役として、知識と親しみやすさを備えた声を届けた。
- 『ONE PIECE』:黄猿(ボルサリーノ)。飄々とした話し方の奥に、海軍大将としての不気味な威圧感を感じさせた。
- 『カウボーイビバップ』:ジェット・ブラック。主人公スパイクの相棒で、経験豊富な大人の落ち着きと人間味を表現した。
- 『ドラゴンボール改』『ドラゴンボール超』:ミスター・サタン。豪快さと見栄っ張りな一面、コミカルな愛嬌を持つ人物を演じた。
- 『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』:ジョセフ・ジョースター。機転の利く人物の軽妙さと、年長者としての貫禄を表現した。
- 『名探偵コナン』:中森銀三。怪盗キッドを追う警部役として、勢いのある芝居を披露した。
- 『頭文字D』:藤原文太。多くを語らず、短い言葉や落ち着いた声で存在感を示す人物を演じた。
- 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』:ヴァン・ホーエンハイム。複雑な過去を背負った人物の静けさと深みを担った。
- 『BANANA FISH』:ディノ・F・ゴルツィネ。物語に緊張感をもたらす権力者を演じた。
これらの役に共通するのは、声の低さそのものよりも、人物が持つ背景を短い台詞や声の運びで伝える力です。同じ低音でも、黄猿ではつかみどころのなさ、ジェット・ブラックでは現実を知る大人の落ち着き、ホーエンハイムでは過去を背負う静けさが前面に出ます。
この違いは、石塚さんを「渋い声の声優」という一言だけで評価すると見落としやすい部分です。作品ごとに声の温度や台詞の間合いを変え、キャラクターの性格と物語上の役割に合わせて演技を組み立てていました。
【年表で整理】デビューから2018年の死去、作品に残された声まで
石塚運昇さんの歩みと、死去後に作品で声が使用された経緯を時系列で見ると、活動の幅だけでなく、過去の収録音声がどのように作品へ引き継がれたのかも理解しやすくなります。
| 時期 | 出来事・作品 | 確認できる内容と意義 |
|---|---|---|
| 1951年5月16日 | 誕生 | 福井県勝山市出身。俳優・声優・ナレーターとして活動。 |
| 1984年 | 『巨神ゴーグ』 | テレビアニメでの出演歴を重ね、声優としてのキャリアを築く。 |
| 1997年 | 『ポケットモンスター』 | オーキド博士役を担当。「ひゃくごじゅういち」の歌唱でも知られる。 |
| 1998年 | 『カウボーイビバップ』 | ジェット・ブラック役を担当し、作品を代表するキャラクターの一人を演じる。 |
| 2009年以降 | 『ONE PIECE』の黄猿 | 海軍大将ボルサリーノを演じ、独特の話し方と存在感で知られる。 |
| 2018年8月13日 | 死去 | 食道がんのため死去。青二プロダクションが同月17日に公表。 |
| 2019年以降 | 後任への引き継ぎ | オーキド博士や黄猿などの持ち役が、それぞれ後任の声優へ引き継がれる。 |
| 2022年12月23日 | 『ポケットモンスター 遥かなる青い空』 | 生前に収録した音声を編集する形で、石塚さんのナレーションが放送された。 |
| 2023年 | 『ポケットモンスター めざせポケモンマスター』 | シリーズ最終話を含め、生前収録のポケモンの鳴き声などが作品に使用された。 |
訃報は、所属事務所の青二プロダクションが2018年8月17日に公表しました。発表では、かねてより病気療養中だった石塚さんが、同月13日に食道がんのため亡くなったことが伝えられています。
ここで押さえておきたいのは、石塚さんの死去後に放送された作品のすべてが、新たに本人の声を収録したものではないという点です。生前に収録された音声が、制作側の判断によって後年のエピソードに使用される場合があります。これは声優交代とは別の仕組みです。
また、年表の作品年は代表的な活動の節目を示したものです。出演開始時期や役柄の登場時期は作品によって異なり、長期シリーズでは放送回ごとにキャストが変わる場合もあります。
【後任は誰?】堀内賢雄と置鮎龍太郎への継承、ライブラリ出演の違い
石塚運昇さんの死去後、ファンの関心を集めたのが、長年演じてきたキャラクターの声が誰に引き継がれたのかという問題でした。代表的な例として知られるのが、『ポケットモンスター』のオーキド博士とナレーション、『ONE PIECE』の黄猿です。
オーキド博士とポケモンシリーズのナレーションは堀内賢雄さんが後任を務めています。テレビ東京の公式キャスト情報でも、オーキド博士役として堀内さんの名前が掲載されています。長く続くシリーズでは、作品の世界観を保ちながら、新しいキャストによって物語を継続することが必要になります。
一方、『ONE PIECE』の黄猿ことボルサリーノは、石塚さんの死去後、置鮎龍太郎さんが引き継いでいます。黄猿の特徴であるゆったりした話し方や、何を考えているのか分かりにくい雰囲気は、キャラクターの個性そのものに深く結びついていました。後任による演技は、その人物像を保ちながら物語を先へ進める役割を担っています。
ただし、すべての役に一人の後任が決まっているわけではありません。出演作品、媒体、登場時期によって対応は異なります。テレビアニメとゲーム、劇場作品などでキャストが違うこともあるため、キャラクター名だけで一律に判断せず、作品ごとの公式キャスト表を確認することが大切です。
もう一つ、混同されやすいのが「ライブラリ出演」です。これは、過去に収録された音声を後年の作品でも使用することを指します。亡くなった声優が新たに収録したわけではなく、すでに存在する音声を制作上の判断で活用する仕組みです。
『ポケットモンスター サン&ムーン』では、マーマネのデンヂムシなど、石塚さんが生前に収録したポケモンの鳴き声が使用されました。その後のテレビシリーズでも、サトシのオオスバメなどの生前収録音声が流用されています。2023年放送の『ポケットモンスター めざせポケモンマスター』最終話も、石塚さんの過去の音声が作品に残された例として挙げられます。
さらに、テレビ東京が放送した特別編『ポケットモンスター 遥かなる青い空』では、2022年12月23日、生前の収録音声を編集する形で石塚さんのナレーションが流れました。死去から約4年後にあたる時期に、作品の中でその声が再び聞かれたことになります。
この事例が示すのは、声優の仕事が放送時点だけで完結するものではないということです。音声は映像作品の一部として記録され、適切な条件のもとで後年の作品に活用されることがあります。ただし、過去の音声が使われた事実と、現在も新規収録が行われていることは明確に区別する必要があります。
【功績を読み解く】リーディングカンパニーと、石塚運昇の声が残したもの
石塚運昇さんの功績を考える際、代表作の数だけでは捉えきれない側面があります。それが、朗読指導や演出を通じて、言葉を届ける技術を次の世代へ伝えていたことです。
石塚運昇 リーディングカンパニーでは、参加者によるリーディング劇を行い、石塚さん自身が演出や演技指導を手がけていました。朗読は、アニメのように映像や動きで情報を補うことができません。声の強弱、息継ぎ、間、語尾の処理などによって、聞き手に情景や人物の感情を伝える必要があります。
その意味で、石塚さんが長年の俳優・声優経験を朗読指導に生かしていたことは、活動の重要な一面です。画面の中でキャラクターを成立させる技術と、音声だけで物語を届ける技術は、異なるようでいて密接につながっています。
また、ナレーションの仕事も忘れてはなりません。アニメではキャラクターの個性を表現する一方、ナレーションでは映像や情報を受け取る人の理解を支えます。石塚さんの声は、物語を演じる声としてだけでなく、情報を伝える声としても活用されてきました。
では、石塚さんの演技を振り返る際、何を基準に作品を選べばよいのでしょうか。おすすめは、役柄の違う作品を並べて聞くことです。
- 親しみやすい声を知りたい人:『ポケットモンスター』のオーキド博士から入り、語り口の温かさを味わう。
- 渋い大人の演技を知りたい人:『カウボーイビバップ』のジェット・ブラックを見て、台詞の間や抑制された感情表現に注目する。
- 不気味な存在感を知りたい人:『ONE PIECE』の黄猿を通して、ゆったりした口調と人物の底知れなさの関係を聞き比べる。
- 演技の幅を確かめたい人:『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』のジョセフ・ジョースターや『ドラゴンボール』シリーズのミスター・サタンも併せて見る。
反対に、低い声や有名キャラクターだけを基準にすると、石塚さんの演技の幅を見落としやすくなります。役ごとの人物像、台詞のテンポ、声の表情を比べることが、作品をより深く楽しむ手がかりになります。
2026年現在、石塚さん本人による新しい収録音声が追加され続けているわけではありません。それでも、過去の作品、公式に販売された音楽、記録されたナレーション、後任へ引き継がれたキャラクターを通じて、その仕事に触れる機会は残されています。音声の記録と後任の演技は、それぞれ異なる形で作品を支えています。
【石塚運昇】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:石塚運昇さんはいつ亡くなりましたか?
A1:2018年8月13日です。所属事務所の青二プロダクションは同月17日に訃報を公表し、死因は食道がんと発表しました。生年月日は1951年5月16日で、亡くなった時の満年齢は67歳です。
Q2:オーキド博士の後任声優は誰ですか?
A2:堀内賢雄さんです。ポケモンシリーズのナレーションも堀内さんが後任を務めています。なお、作品や時期によってキャスト表記が異なる場合があるため、個別のエピソードは公式キャスト情報で確認するのが確実です。
Q3:「ひゃくごじゅういち」は石塚運昇さんが歌っていた曲ですか?
A3:はい。初代『ポケットモンスター』のエンディングテーマで、オーキド博士役の石塚運昇さんとポケモンキッズが歌っています。ソニー・ミュージックの公式ディスコグラフィにも、この歌唱名義が記載されています。
Q4:『ONE PIECE』の黄猿の声優は変わりましたか?
A4:変わりました。石塚運昇さんの死去後、置鮎龍太郎さんが黄猿ことボルサリーノ役を引き継いでいます。
Q5:石塚運昇さんの声は、死去後の『ポケモン』でも聞けますか?
A5:はい。生前に収録されたポケモンの鳴き声などが、後年の作品にライブラリ音声として使用されています。また、2022年12月23日放送の特別編『ポケットモンスター 遥かなる青い空』では、過去の収録音声を編集したナレーションが流れました。これは死去後に新しく収録した音声ではありません。
まとめ:【プロの結論】石塚運昇の功績は、声の記録と演技の継承にある
石塚運昇さんは、オーキド博士という親しみやすい存在から、黄猿のような底知れない人物、ジェット・ブラックのような経験豊富な大人まで、幅広い役柄を演じた声優でした。低く響く声に加え、台詞の間や抑揚、人物の背景を感じさせる表現力が、数多くの作品で存在感を生み出してきました。
『ポケットモンスター』では、オーキド博士役に加え、「ひゃくごじゅういち」の歌唱や子どもたちとの交流が、本人の仕事への意識にも影響を与えました。朗読指導を行うリーディングカンパニーを主催していたことも、表現者としての石塚さんを理解するうえで欠かせません。
2018年8月13日の死去後、オーキド博士や黄猿などの役は後任へ引き継がれました。一方、生前に収録した音声は、後年の『ポケットモンスター』シリーズや特別編にも残されています。新しい声を吹き込む後任の仕事と、記録された声を作品に生かすライブラリ出演は、どちらも作品を継続させるための大切な仕組みです。
石塚運昇さんの功績を知る最も確かな方法は、代表作を一つだけで判断せず、異なる役柄の演技を聞き比べることです。オーキド博士の温かさ、黄猿の不気味な余裕、ジェット・ブラックの渋さを比べると、同じ声優が作品ごとにどれほど違う人物を成立させていたかが見えてきます。残された音声と受け継がれた役柄は、石塚さんが日本のアニメ・声優文化に刻んだ仕事を、これからも伝えていきます。 (出典: 石塚運昇(Yahoo!ニュース))